平福獅子舞の演目
1. 三番叟(さんばそう)
獅子舞の初めを勤める舞。獅子頭を被り、手に御幣(ごへい)と鈴を持って舞う。荘重で芸術的、郷土芸能の極地とも言えるものであった。後述の神来舞(しんぐるま)に似ているが、柔らかく曲線的に舞う神来舞と異なり、しゃきしゃきと直線的に(土地の言葉で「きっぽう」になって)舞う。かつてこの舞の名手がいたが、若くして亡くなり、残念ながらこの舞は継承されていない。
2. 神来舞(しんぐるま)
獅子頭を被り、手甲(てっこう)に袴の舞手が、獅子の身体の布を捻じって首に巻いたお伴の子供を連れて登場する。手に御幣(ごへい)と鈴を持ち、五穀豊饒家内安全を祈願し、祓い清めるという舞で、柔らかく優美に舞う。笛の旋律も印象的なもの。
3. 一本舞(いっぽんまい)
主に小学生ぐらいの子供が5人程、扇子を一本持ち、輪になって舞う。湿田に遊ぶ鷺の姿を連想させる舞である。男子の成長を愛でる所作も込められている。
4. 剣(つるぎ)
獅子の中に4〜5人が入り、息を合わせて練り歩く。先頭は掛け声を掛けながら舞う。剣を持った天狗との絡みが見もの。獅子は天狗から剣を受け取り、天狗とともに舞台の四方を剣を抜いて清める。
5. 笹喰い(ささくい)
いたずら盛りの獅子でしょうか。中央にある笹を食べようとするが、その笹には蜂の巣が付いている。笹は獅子の大好物。しかし蜂は怖い。獅子は震えながらも、蜂の巣に近づく。遂には笹を食べて嬉しそう。しかし、蜂に見立てた紙吹雪が降るとヒヤリとする。笹は獅子舞の前日に切っておくと葉がしおれるので、当日の朝切りに行く。
6. 二本舞(にほんまい)
中学生以上の青年が2〜3人で扇子を二本手にして舞う。一本舞と基本的には同じ所作であるが、より熟練した舞になっている。二本の扇子をヒラヒラと回転させて優雅に舞い、たすきを掛け、力を込めて、いざ出陣。男子の晴れ舞台へのデビューというような所作もある。力を入れ過ぎて熱くなったので着物の襟をはだけて仰ぐような所作もあり、これは農作業を表現しているとの意見もあるが明らかでない。
7. 牡丹喰い(ぼたんくい)
獅子舞の華と言えるような勇壮で華麗な舞。獅子と牡丹は昔から出合いのもの。中央に立てられた牡丹をしきりに気にして獅子が舞う。ついには牡丹の花を一輪もぎ取り、喜んで帰って行く。青年になった獅子が、牡丹の花ならぬ若い女の子に気もそぞろと言ったところと解説を付ける人もいる。そのように見ると面白く見られる。牡丹の花は、びわの木を切って来て大きな花をとりつける。
8. 寝獅子(ねじし)
再び登場した獅子はいかにも眠そうなしぐさ。蜂の巣や牡丹と遊び過ぎて疲れてしまった。ついには中央で寝てしまう。そこへ、ささらを手にした天狗が登場する。天狗は知恵者で、獅子の機嫌を損なわぬよう、そろっと起こそうとする。天狗の息を凝らした迫真の演技を、観衆は固唾を呑んで見守る。寝ている獅子は無視しているが、時々耳をピクつかせたり、お尻をモゾモゾさせたりする。(獅子の寝姿を決めるのも芸の内。後ろの人の引っ張る力ですぐ獅子頭が動いてしまうので、先頭の獅子頭の人は両腕でグっと頭を押さえていないといけない。その上で、両手で耳を動かしたりする。)天狗の知恵が奏功し、天狗の鳴らすささらの音に遂に獅子は起きだし、音に吸い寄せられるように、天狗と一緒に舞って行く。短音階の笛の音色も美しく、印象的。
9. がんぐり
四方を暴れ回る、蚤(のみ)をとる真似。獅子の中に入っている人達が息を合わせ、次々に見せる芸当が見もの。ほとんどアドリブで舞手達の見せ所。獅子が寝そべって、胴幕に入っている人達が幕の中で各々頭をポコリと飛び出させ、交互に左右にグリグリ振ったりするのでその名が付いたとのこと。